歴史的探偵小説の興味
れきしてきたんていしょうせつのきょうみ
初出:「新青年」博文館、1925(大正14)年新春増刊号分量:約6分
書き出し:森下雨村氏から歴史的探偵小説に就《つい》て何か書かないかといわれて、はい、よろしいと易《やす》受合いをしたものの、さて書こうと思うと何にも書けない。これが犯罪学に関したことなら、参考書と首っ引きで、相当に御茶を濁《にご》すことが出来るが、歴史的探偵小説を研究した参考書などは一冊もなく、ただもう自分の読んだ(それも多くは遠い過去に読んだ)少数の作品に就てのぼんやりした感じより浮ばないのであるからほと...