「発病」の感想
発病
はつびょう

北条民雄

分量:約12
書き出し:いつたいに慢性病はどの病気でも春先から梅雨期へかけて最も悪化する傾向がある。結核などはその著しい例であらうと思ふが、癩もやはりさうで、この頃になるとそれまで抜けなかつた頭髪が急に抜け始めたり、視力が弱つて眼がだんだんかすんだり充血したりする。私もこの春突然充血した眼が、いまだに良くならないでゐる。勿論その頃に較べるとずつと良くなつたし、それに秋がもう始まつてゐるのでだんだん良くなつて行きつつあるが...
更新日: 2016/04/09
芦屋のまーちゃんさんの感想

彼の作品の「いのちの初夜」を読んだことがある。題名から想像するに何かもっと男女間の性的エロスを期待して手に取ったのだが、そうした不埒な思いを一掃するほどの衝撃を受けた。筆者自らがハンセン病を「発病」した。自分は特別な位置にある存在で、NEWSで毎日報道される病死や殺人などの事件事故は、どこか別世界の話に聞こえる心境、同感である。誰にでも襲いかかる不幸。人は必ずいつかは死ぬ!ということが唯一平等なのである。