「潮霧」の感想
潮霧
ガス
初出:「時事新報 第11839號~第11841號」1916(大正5)年8月1日~3日

有島武郎

分量:約10
書き出し:南洋に醗酵して本州の東海岸を洗ひながら北に走る黒潮が、津輕の鼻から方向を變へて東に流れて行く。樺太の氷に閉されてゐた海の水が、寒い重々しい一脈の流れとなつて、根室釧路の沖をかすめて西南に突進する。而してこの二つの潮流の尅する所に濃霧が起こる。北人の云ふ潮霧《ガス》とはそれだ。六月のある日、陽のくれ/″\に室蘭を出て函館に向ふ汽船と云ふ程にもない小さな汽船があつた。彼れはその甲板に立つてゐた。吹き落...
更新日: 2022/02/08
19双之川喜41さんの感想

 暖かい海流と 冷たい海流が ぶつかるところに 濃い霧が 発生する。北国の人々は それを 「ガス」と呼ぶらしい。室蘭を出て 函館に向かう 小さな汽船で 潮霧(ガス)に  見舞われたけれども 惠山にもぶつからず なんとか目的地に着く。些事ながら 有島は 「魔女の 髪ように乱れた」という 表現を 他の文章でも 使っている。 お気に入りの表現 らしいと思った。