赤痢
せきり
初出:「スバル 創刊号」1909(明治42)年1月1日分量:約41分
書き出し:凹凸《でこぼこ》の石高路《いしだかみち》その往還を左右から挾んだ低い茅葺屋根が、凡そ六七十もあらう。何《ど》の家も、何の家も、古びて、穢なくて、壁が落ちて、柱が歪んで、隣々に倒《のめ》り合つて辛々《やう/\》支へてる樣に見える。家の中には生木の薪を焚く煙が、物の置所も分明《さだか》ならぬ程に燻《くすぶ》つて、それが、日一日|破風《はふ》と誘ひ合つては、腐れた屋根に這つてゐる。兩側の狹い淺い溝には、...