孔雀の樹に就いて
くじゃくのきについて
初出:「新青年 増大号」1926(大正15)年4月分量:約3分
書き出し:最近読んだ内外の作で、最も感銘の深かったのは、小酒井不木氏翻訳のチェスタアトンの「孔雀の樹」です。探偵小説としての筋立てから云っても、(非常に新鮮では無いにしても)一流の作に属す可《べ》きもので、最後の殿様ヴェーンの出現や、医師ブラウンが真犯人で無いなど——いや一切この事件に犯罪が無かったということなどは、最後のカーテンの下ろされるまでどんな読者でも考えられなかったでしょう。謂《い》う所の龕燈《が...