「癩」の感想
らい

島木健作

分量:約94
書き出し:1新しく連れて來られたこの町の丘の上の刑務所に、太田は服役後はじめての眞夏を迎へたのであつた。暑さ寒さも肌に穩やかで町全體がどこか眠つてでも居るかの樣な、瀬戸内海に面したある小都市の刑務所から、何か役所の都合ででもあつたのであらう、慌ただしく只ひとりこちらへ送られて來たのは七月にはいると間もなくの事であつた。太田は柿色の囚衣を青い囚衣に着替へると、小さな連絡船に乘つて、翠巒のおのづから溶けて流れ出...
更新日: 2024/04/25
19双之川喜41さんの感想

 刑務所を 出れたのは 癘病だったからで 娑婆に その身を うつしたとて 身を立てる 術が あるわけではなく 放免という 自由と引換えに その先に 待ち受けているのは 食うに困る 果てしない難儀の 連続である。読み手は さきのみえない 暗い 気持ちになる。