ある女の裁判
あるおんなのさいばん
初出:「解放 第二巻第二号」1920(大正9)年2月1日分量:約33分
書き出し:一ああ!漸く、ほんとにやうやく、今日もまた今のびのびと体を投げ出すことの出来る時が来ました。けれど、もう十一時半なんです。此の辺では真夜中なんです。そして、今日の裁判所での半日は、それでなくても疲れ切つてゐる私を、もうすつかりへとへとに疲らして仕舞ひました。出来るなら私は其処から真直ぐに家へ帰つて何も彼も投げ出して、寝床にころげ込みたいと思ひました。でも、南品川の叔父さんと叔母さんにお守りをされな...