1912年春、東京の女学校を卒業して帰郷した野枝さんを待っていたのは見ず知らずの男との結婚であった。親族が決めた結婚を拒否して郷里を飛び出した野枝さんは、青鞜社をおこした平塚らいてうに胸の内を話し、激励を受け、この結婚を解消するために再び郷里へ戻る。 しかし、すでに入籍も済まされており親族の誰一人として野枝さんの気持ちを理解するものはいない。野枝さんを縛り付ける「娘の結婚は親が決める」という習俗。 何故解ってもらえないのか。自分の心と身体は自分のものではないのか。自分の進む道は自分で決めたい。辛く床に伏す毎日。わずかの慰めは今宿の海辺を歩く時だけだった…。 苦悩の日々を日記形式で綴った『青鞜』第二作。11月号にデビュー作『東の渚』を発表した野枝さんは、翌月号に「日記より」を発表し、自由を求めて習俗打破の道を歩み始める。
病室で床に伏せってばかりいれば、色々な事を考えてしまう。穏やかな気持ちが続けば良いが、潜在的な不安のためか、わがままを通じて、不自由に対してのささやかな抵抗を試みる。