明治のフェミニスト、アナーキストである伊藤野枝女史の作品。彼女の描く社会の底辺には全く救いがなく絶望的な読後感。一方で、底辺層の救われない現実を淡々と描く小説であっても、野枝女史の作品からは「何とかしなければ」「このままじゃいけないんだ」という熱い叫びが聞こえてくるような、エネルギーにあふれてもいる。 明治を生きて、信念の為に死んだ野枝女史は、生まれてくる時代を間違えたとしか言いようがない。彼女の信念は今の時代にもそっくりそのまま訴えかけられる。言い換えれば、明治から世界は殆ど変わっていないということかもしれない。