伊藤野枝17歳の『青鞜』デビュー作。この作品は当時は当たり前であった娘の結婚は親が決めるという習俗に対する抵抗と出発の詩である。 2年間の東京での女学校生活を終えた野枝を待ち受けていたのは郷里での見ず知らずの男との結婚であった。野枝は思う。自分の心も体も自分のもの。自分の生き方は自分で決める。私はもっと勉強して筆で身を立てて行きたいのだ。結婚は嫌だ。しかし、野枝の気持ちを理解する者は誰もいない。わがままをいうな。おまえのためを思って決めた結婚だ。黙って従っていれば幸せになれる。 体をこわし床に伏す毎日、今宿の海辺に立つ野枝。この苦しみから逃れるにはいっそ海に飛び込んで…。だが、野枝が選んだのは死ではなく、強制された結婚を拒否して郷里から飛び翔ち、『青鞜』と共に自由な自己の道を歩いて行くことであった。 自由と女性の解放を求めて書き、闘い、生きた伊藤野枝の出発の詩-記念碑的作品である。