広東葱
かんとんねぎ
初出:「講談雑誌」1921(大正10)年9月分量:約20分
書き出し:一夕飯の時刻になったので新井君と自分とは家を出た。そして自分の行きつけの——と云っても二三回行っただけの——黄華軒《こうかけん》という支那料理店へ夕飯を食いに這入《はい》って行った。「日本人は一人も居ないんだね」新井君は不意にこう云ったが、自分にはその意味が解らなかった。「日本人が一人も居ないとは?」「料理人《コック》もボーイも支那人だね……屹度《きっと》主人も支那人だろう」「何故?」と自分は訊き...