畳まれた町
たたまれたまち
初出:「サンデー毎日」1927(昭和2)年7月17日分量:約9分
書き出し:一ボーン!音だ!ピストルの音だ!……と、そんなように思われた。で探偵が走って来た。町は相当|賑《にぎや》かであった。電車が五ツ通っていた。家根は黒く車体は緑で、そうして柱はピンク色であった。車輪が黄金《きん》色で車道は青い。だが何《ど》うしたというのだろう。客が一人も乗っていないではないか。自動車が九ツ流れていた。その中の一つは貨物自動車で、黄色い荷物をのっけている。往来の左側にビルディングがある...