夢の如く出現した彼
ゆめのごとくしゅつげんしたかれ
初出:「月刊探偵」黒白書房、1936(昭和11)年5月号分量:約6分
書き出し:燃え上った十年、作家生活の火華は火華を産ンで、花火線香の最後に落ちる玉となって消えた夢野久作、その火華は、今十巻の全集となって、世に出ようとしている。久作さんを知ったのは何時の頃からかは、はっきりしない。何でも幼い頃からで、産れながらに知っていたような気もする。「夢野久作ってのが、頻りに探偵小説の様なもの——事実探偵小説の様なものであって、そん処《ジョ》そこらにある様な、単なる探偵小説とは、およそ...