木村荘八
欄干というと 大川の橋の上から 果物の皮を 細く長く剥き 水面まで届くか 人寄せにやってみせる 器用者が その昔いた。物見高いは 江戸の華 なので 黒山の 人だかりと なる。拍手 喝采で うまくいき 人が散ると 懐中の 財布は 無くなっている。仲間を 語らって 擦りを 企むという 仕掛けである。毎日 仕組むと ばれるので あまり 割のよい お仕事では なかったのだろう。 川の 水かさが 増すと 馬が ぐるぐる まわりながら 流されたり 藁葺きの屋根 だけが 流れて行くことも あったという。