歩くこと
あるくこと
初出:「日本および日本人」光文社、1954(昭和29)年4月分量:約16分
書き出し:自分の頭が混乱したり、気持がよわくなったり、心が疲れたりしたときには、私はよく歩きに出かけます。それはたいがいのばあい、そういう自分の状態をなおそうとハッキリ思ってすることではなく、本能的にすることです。ほとんど無意識のうちに私は立ちあがり、かんたんな身支度をして家を出て、外を歩いています。それはまず、私が外気の中にいることが好きなこと、風景を見ることが好きなこと、知らない人びとの姿や顔を眺めるこ...