堀辰雄
自然描写と主人公の心理描写に優れた作品ではある。 しかし主人公の愛が独りよがりで、病人と二人きりの閉鎖空間ではその理想の愛を貫き続けるのは難しかった。そもそも主人公は節子のことを自分の良いように解釈していることが多いので、遅かれ早かれ綻びることは必然だったかもしれない。 けれど最初のラブラブだった二人の愛が次第に揺らいでいく描写は見事だと思う。二人の愛が揺らいでいくというより、理想ばかり見続けていた主人公が現実に直面した、と言った方が正確だろうか。 主人公は節子の愛に甘えすぎていたと思う。最後、節子の死後に節子のことを振り返ってその事にちゃんと気づくので、そこそこ収まりのいい作品ではある。
なんか不思議な感じがした。文字を通しての表現がとても美しい。そして人間の生を生々しく描いている?ような気がする‥‥ 読んで良かった
文豪の代表作なので、気合いを入れて読んだのだが、闘病生活が美化され過ぎていて、生活臭というか、真の人間性に対するもの足りさを感じた。 ただ、それは堀辰雄さんがあえて意図していたものなのかもしれない。
何とも言えない。自己愛なんだ。
堀の自叙伝、その一言に尽きる。自身の理想の幸福を追い求め、しかしその幸福の形が分からずにもがき苦しんだ堀の姿が細かく描写されていたように感じた。 堀が恋人節子を愛していたのは確かだろう。しかし、世間と離れた静かな場所で恋人と過ごす事を夢見ていた堀は、ある意味その愛を使って彼女を自身の夢見た世界へ誘い出した。そして幸福を得ようとしたものの、彼女を愛する気持ちより、自身の幸福を追及する気持ちが勝っていることに気づき、自責の念に刈られていく。 堀の繊細な心がその時々の自然の風景を例えに、細かく描かれていたのは印象的だった。しかし、個人的には物語としては物足りなさを感じた。第一に物語の九割は節子と共にいた時間についてだった。にもかかわらず、節子が父に会いたい、つまり堀と別れたいと言ってからの彼女の姿が全く描かれていない。確かにその一言で彼らに何があったかは理解できるが、恐らく一番堀の感情が揺れ動いたであろう時間の描写がないのは、この細かすぎる程彼の感情が書かれた自叙伝には不自然と言えると感じた。 また、「風立ちぬ いざいきめやも」という冒頭の文は、風の様に何処かにたってしまいそうても懸命に生きるべし。と伝えているにも関わらず、物語からはあまりそのテーマが見えてこない。確かに主人公と節子が二人きりで手を取り合い、生きている。という事は書かれていたが、その描写の合間合間に、主人公がその状況を果たしてこれは自分の幸福の為ではないかと懐疑さている。 はっきりと物語が掴めた訳ではないが、何処かが矛盾している様な気がした。
ひたすらきれいな言葉を並べ尽くしたような話。昔の話なんだけど、上流階級なのか、あくせくした感じが全くない。昔から、ヒロインがお金持ちで、病気がちで、儚いと言う、これが大元なんでしょうかね。