雪の上の足跡
ゆきのうえのあしあと
初出:「新潮」1946(昭和21)年3月号分量:約15分
書き出し:主やあ、どこへ行ったかと思ったら、雪だらけになって帰って来たね。学生林の中を歩いて来ました。雑木林の中なぞは随分雪が深いのですね。どうかすると、腰のあたりまで雪の中に埋まってしまいます。獣《けだもの》の足跡が一めんについているので、そんな上なら大丈夫かとおもって、足を踏みこむと、その下が藪《やぶ》になっていたりして、飛んだ目に逢ったりしました。主君と、兎なんぞが一しょになるものかね。それに、もうい...