按摩
あんま
初出:「新青年 増刊号」博文館、1925(大正14)年8月号分量:約10分
書き出し:コホン、コホンと老|按摩《あんま》は彼の肩を揉《も》みながら、彼の吸う煙草の煙にむせんで顔をしかめた。少し仰向き加減に、首と右肩との角度を六十度ぐらいにして居るところを見ると、生れつきの盲人《めくら》であるらしい。郊外の冬の夜は静《しずか》である。「旦那はずいぶん煙草ずきですねえ。三十分たたぬうちに十本あまりも召し上ったようですねえ」と、彼は狡猾《ずる》そうな笑いを浮べて言った。「うむ。俺はニコチ...