ある自殺者の手記
あるじさつしゃのしゅき
初出:「サンデー毎日特別号」1927(昭和2)年9月号分量:約15分
書き出し:加藤君、僕はいよいよ自殺することにした。この場合自殺が僕にとって唯一の道であるからである。断って置くが、僕は決して、最近死んだ某文士を模倣するのではない。世間の人は二つの自殺が相前後して発生すると、後の例を前の例の模倣であると見做《みな》そうとする。しかし、これほど馬鹿げた話はない。そんな風にいうならば、世の中のすべての出来事は模倣でなくて何であろう。が、僕はいま、このような理窟をいっている場合で...