麦藁帽子
むぎわらぼうし
初出:「日本國民」日本國民社、1932(昭和7)年9月号分量:約41分
書き出し:私は十五だった。そしてお前は十三だった。私はお前の兄たちと、苜宿《うまごやし》の白い花の密生した原っぱで、ベエスボオルの練習をしていた。お前は、その小さな弟と一しょに、遠くの方で、私たちの練習を見ていた。その白い花を摘んでは、それで花環《はなわ》をつくりながら。飛球があがる。私は一所懸命に走る。球《たま》がグロオブに触《さわ》る。足が滑《すべ》る。私の体がもんどり打って、原っぱから、田圃《たんぼ》...