堀辰雄
ドロップのような透き通る鮮やかな夢と、ピカソのような暗くて重い色の夢がそれぞれ回想される。そして或るホテルの或る女の子についての現実が、主人公に謎めいた夢を思い出させる。これは後者のタイプの夢であり、妙な現実感を伴うものだった。夢と現実との境とは。現実はドロップ色なのかピカソ色なのか。最後の1文は読者に、夢が現実を操っているようにも思わせる。 得体の知れない満足感と不快感を味わえる作品だった。