「鳥料理」の感想
鳥料理
とりりょうり
初出:「行動」1934(昭和9)年1月号

堀辰雄

分量:約20
書き出し:前口上昔タルティーニと云う作曲家がTrillo del Diavoloと云うソナータを夢の中で作曲したと云う話は大層有名な話である故《ゆえ》、読者諸君も大方御存知だろうが、一寸《ちょっと》私の手許《てもと》にある音楽辞典から引用してみると、何でもタルティーニは或《ある》晩の事、自分の霊魂を悪魔に売った夢を見たそうな。その時悪魔がヴァイオリンを手にとっていとも巧に弾奏し出したのは到底彼の企て及ばざり...
更新日: 2025/07/23
ふねりさんの感想

ドロップのような透き通る鮮やかな夢と、ピカソのような暗くて重い色の夢がそれぞれ回想される。そして或るホテルの或る女の子についての現実が、主人公に謎めいた夢を思い出させる。これは後者のタイプの夢であり、妙な現実感を伴うものだった。夢と現実との境とは。現実はドロップ色なのかピカソ色なのか。最後の1文は読者に、夢が現実を操っているようにも思わせる。 得体の知れない満足感と不快感を味わえる作品だった。