菊あわせ
きくあわせ
初出:「文藝春秋」1932(昭和7)年1月号分量:約56分
書き出し:「蟹《かに》です、あのすくすくと刺《とげ》のある。……あれは、東京では、まだ珍らしいのですが、魚市をあるいていて、鮒《ふな》、鰡《ぼら》など、潟魚《かたうお》をぴちゃぴちゃ刎《は》ねさせながら売っているのと、おし合って……その茨蟹《いばらがに》が薄暮方《うすくれがた》の焚火のように目についたものですから、つれの婦《おんな》ども、家内と、もう一人、親類の娘をつれております。——ご挨拶をさせますのです...