ある日
あるひ
初出:「婦人公論 第五年第九号」1920(大正9)年9月1日分量:約24分
書き出し:その時丁度午飯のあと片附をすませた妻は、私達の傍を通つて、そのまゝ居間の方へと行つた。私は男の子供達に英語を教へながら、裏庭の深い緑葉を透してさし込んで来る暑い夏の日影を眺めた。庭にはゑぞ菊の毒々しく赤いのが日に照らされてゐるのが見えた。妻の入つて行つた居間の方にも、表の方に面して樹木の多い庭が凉しく開かれてあるのであつた。そこには娘や幼い子供達が寝そべつたり何かしてゐるのであつたが、不図、誰か見...