「磯清水」の感想
磯清水
いそしみず
初出:「令女界 第四巻第九号」1925(大正14)年9月1日

田山花袋

分量:約11
書き出し:一二人はよく裏の松林の中を散歩した。そこにはいろいろな花が下草に雑つて刺繍でもしたやうに咲いてゐた。黄《きいろ》い小さな花、紫色をした龍胆に似た花、白く叢を成して咲いてゐる花、運が好いと、真紅《まつか》な美しい撫子の一つ二つをその中から捜すことは出来た。波の音は地を撼《うごか》すやうに絶えずきこえて来てゐた。下には海水浴をする人達のために構へられた旅舎が二軒も三軒も連つてゐるのが見えた。『正夫さん...
更新日: 2025/10/09
艚埜臚羇1941さんの感想

  二人の上には 恋の エンジェルは まだ 竪琴を 弾きだそうとは しなかった。 磯部の 岩と岩の間に 滾々と 清水が わきだしていた。交代に その 水を 含み 冷たさに 一息付き さらに 磯づたいに 進むと 男女の 相対死が 無惨に 岸に 打ち寄せる。二人は 恋の 行き着く果てを 目の当たりにした。始まっても いない 自分達を 他人の 死と 対比させ 自然の 描写も 巧みで あると 感じた。