田山花袋
若い 二人の 間には 恋の エンジェルは まだ 竪琴を 弾きだそうとは しなかった。 磯部の 岩と岩の間に 滾々(とうとう)と 清水が わきだしていた。交代に その 水を 含み 冷たさに 一息付き さらに 磯づたいに 進むと 男女の 相対死が 無惨に 岸に 打ち寄せる。二人は 恋の 行き着く果てを 目の当たりにした。始まっても いない 自分達の 戀を 他人の 死とを 対比させており 自然の描写も 巧みで あると 感じた。