一少女
いちしょうじょ
初出:「令女界 第五巻第三号」1926(大正15)年3月1日分量:約12分
書き出し:一私達が北満洲に行つた時の話ですが、あのセミヨノフ将軍の没落した後のロシアの避難民のさまは悲惨を極めたものだつたさうです。何でもハルビンも危険だといふので、手に手を取つて松花江の氷の上をわたつて、陸続として長春から吉林《きつりん》の方へ入つて来たのださうですが、それは惨めなものだつたさうです。私達は国境近いところから、何処の町に行つても大きな包を負つて跣足《はだし》で歩いてゐるロシア人を多く見まし...