「波の音」の感想
波の音
なみのおと
初出:「女性改造 第二巻第四号」1923(大正12)年4月1日

田山花袋

分量:約14
書き出し:一『何うもあれは変だね?』かう大学生の小畠《こばた》はそこに入つて来た旅舎の中年の女中に言つた。それは広い海に面した室で、長い縁側と、スロオプになつてゐる広場とを隔てゝ、向うに波の白く凄《すさま》じく岩に当つて砕けてゐるのを目にするやうなところであつた。『え?』頷で客の指す方に眼を遣りながら女中は訊いた。『あの女さ?』『あ、あの岩の上の?本当ね?何うかしてるのね?』女中もぢつと其方の方を見た。岸に...
更新日: 2022/02/06
19双之川喜41さんの感想

 筋という筋が あるわけではないけど 詩情あふれる文章である。転地療法に 来た 若い男が 海岸の岩場を 逡巡する 若い女を 連日 宿の窓から 見かけるので 意を決して 声をかけてみる。理由も聞かずに 心配するなと 言い続ける 男の優しさが 読み手にも 伝わってくると思った。