自からを信ぜよ
みずからをしんぜよ
初出:「文章世界 第十二巻第六号」1917(大正6)年6月1日分量:約11分
書き出し:一総て物が平等に見え出して来るといふことは、面白い人間の心理状態である。美も醜も、善も悪も、旨《うま》いも拙《まず》いも、昔感じたやうに大きな差別を見ずに、又は好悪を感ぜずに、あるがまゝにあるといふ風に感じて来る心理、この心理は差別をのみ気にし、又は箇《こ》をのみ気にした心理と、何《ど》ういふ関係を持つてゐるか。人が大きな家屋に住んでゐる。立派な庭園を持つてゐる。綺羅《きら》を尽してゐる。贅沢を尽...