「私の考へてゐる事」の感想
私の考へてゐる事
わたしのかんがえていること
初出:「文章倶楽部 第十一巻第二号」新潮社、1926(大正15)年2月1日

田山花袋

分量:約13
書き出し:若い人達のためには、私は第一に勉強することを勧める。しかし勉強と言つても書くことばかりではない。読書すること、見学すること、論議すること、すべてそれを指して言つてゐるのである。若い頃にはいくらあせつても、実人生のことには容易に本当に触れ得るものではないのである。父母兄弟、叔父伯母、さういふものの中にその一部を発見するにはしても、十分にそれを理解することは出来ないものである。従つて余りに年若くて、実...
更新日: 2018/05/27
いちにいさんの感想

芸術の師は自然なり。 また 学者では芸術作品、特に偉大なる小説などを書くことはできない。 人生を描くのは研究者ではダメなのだ! 広い知識は必要だ。それは経験であり、決して若いうちから備わるものではない。しかし、蟻の生態を20年研究観察した学者がどんな芸術作品を世に産み出せるというのか? けだし、 女を抱いたこともなく、虫どもの交尾を見ている輩に何を期待するのか! 来るべき時が来れば、小説の一本でも書ける気がする年齢に余はなってしまった。それは、大いなる錯覚なれど、青春への憧憬であり復讐であり、人生をやり直したいと思う後悔でもある。 平凡なサラリーマンにしかなれなかった人生、誰が余の作文など読むというのか? 日曜の夜は愚痴になるのが常だ。