ペチヨリンとゲザ
ペチヨリンとゲザ
初出:「中央文学 第一年第二号」1917(大正6)年1月1日分量:約8分
書き出し:鴎外漁史の『しがらみ草紙』は、当年の文学書生であつた私達に取つては、非常に利益の多いものだつた。明治の文壇は、その大半を、この『しがらみ草紙』によつて覚醒させられたと言つても好いと私は思ふ。ドイツを中心にして、ロシア、フランス、スペイン、ベルジユーム、オーストリア・ハンガリイ、諾威《のるうえ》、丁抹《でんまーく》、さういふ各国の文学がそこに移植せられた。鴎外氏は、医者の方でも医者の医者ださうだが、...