夜釣の怪
よづりのかい
初出:「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月分量:約3分
書き出し:私の祖父《じじい》は釣《つり》が所好《すき》でして、よく、王子《おうじ》の扇屋の主人や、千住《せんじゅ》の女郎屋の主人なぞと一緒に釣《つり》に行きました。これもその女郎屋の主人と、夜釣に行った時の事で御座《ござ》います。川がありまして、土堤《どて》が二三ヶ所、処々《ところどころ》崩れているんだそうで御座《ござ》います。其処《そこ》へこう陣取りまして、五六|間《けん》離れた処《ところ》に、その女郎屋...