作者は震災復興後の神田の変化に寂寥の感を抱いているが、この随筆を青空文庫で読んだ私は、液晶越しから作者に思いを重ねることから、現在の神田、神保町にも思いを馳せることとなり、胸を痛めた。皮肉なものだ。
古い話だが、学生時代(正確には浪人時代)に「研数学館」に通っていた。駿台、代ゼミ、河合の3大予備校が全盛期だったが、あえて研数を選んだのは、神田神保町が理由だ。予備校に通っていたというよりも古本屋に通っていたという印象しか残っていない。既に大学生になった気分で文学書やら哲学書などを立ち読みしていた。意味などわからなくて良かった。雰囲気が全てだった。綺麗な女子学生がロシア文学のツルゲーネフ辺りを探していたら、どんなにか最高か、と考えていたはずだ。そんなことは絶対に起こり得ないのに。