梵雲庵漫録
ぼんうんあんまんろく
初出:「七星」第2号、1923(大正12)年5月分量:約10分
書き出し:幼い頃の朧《おぼ》ろげな記憶の糸を辿《たど》って行くと、江戸の末期から明治の初年へかけて、物売や見世物の中には随分面白い異《かわ》ったものがあった。私はそれらを順序なく話して見ようと思う。一まず第一に挙げたいのは、花見時の上野に好《よ》く見掛けたホニホロである。これは唐人《とうじん》の姿をした男が、腰に張子《はりこ》で作った馬の首だけを括《くく》り付け、それに跨《またが》ったような格好で鞭《むち》...