修禅寺物語
しゅぜんじものがたり
――明治座五月興行――
――めいじざごがつこうぎょう――初出:「美芸画報」1911(明治44)年6月号分量:約5分
書き出し:この脚本は『文芸倶楽部《ぶんげいくらぶ》』の一月号に掲載せられたもので、相変らず甘いお芝居。頼家が伊豆の修禅寺で討れたという事実は、誰も知っていることですが、この脚本に現われたる事実は全部嘘です。第一に、主人公の夜叉王《やしゃおう》という人物からして作者が勝手に作り設けたのです。一昨々年《さきおととし》の九月、修禅寺の温泉に一週間ばかり遊んでいる間に、一日《あるひ》修禅寺に参詣《さんけい》して、宝...