かなり前に 訪れたことのある 山奥のひなびた温泉場の焼き場で 自分の孫の遺体を 蓆(むしろ)と薪をもちいて 荼毘(だび)にふす男と 行き合う。 虚子は 幼子を亡くしたこともあり 特別の感慨を持って見守ると感じた。
一番印象に残ったものは、自身の子どもの死をきっかけとした「私」の中の滅亡観とも言うべきものである。その考えをなぞるように、落葉の様子や火場における祖父による孫の火葬の様子があり、菅(?)原だと「私」が思っている人物への噂や火事の当事者ではないかという部分に繋がっていく。特に菅原という人物については不確かな事柄が多いにも関わらず、自身の滅亡観にしたがって後ろ暗い想像に繋がっている。全体を通してどこかさみしい部分が強調された物語であった。