「上野」の感想
上野
うえの

永井荷風

分量:約22
書き出し:震災の後上野の公園も日に日に旧観を改めつつある。まず山王台東側の崖に繁っていた樹木の悉く焼き払われた後、崖も亦その麓をめぐる道路の取ひろげに削り去られ、セメントを以て固められたので、広小路のこなたから眺望する時、公園入口の趣は今までとは全く異るようになった。池の端仲町の池に臨んだ裏通も亦柳の並木の一株も残らず燬かれてしまった後《のち》、池と道路との間に在った溝渠は埋められて、新に広い街路が開通せら...
更新日: 2022/02/03
cdd6f53e9284さんの感想

この随筆を読んで根津に壮大な遊郭があったことを初めて知った。それに不忍池の周囲に競馬場があったとか、上野公園の東端に駅ができ汽車などが停まるようになって、すこぶる感興を削ぐなど、僅かなページのなかに情報量満載で大変楽しく読むことができた。なかでも最も感動的だったのは、明治が江戸と空間的にも時間的にも渾然一体の地続きだったことを実感できたことだろうか。