本作品は、著者が幼少の頃の思い出の地“小石川”界隈の情景が、人間模様と絡まりあって綴られています。明治期の小石川界隈の情景を知ることができて、面白いです。本題『伝通院』は、作品中紹介されている通り、江戸時代の江戸三大霊山の一つで、徳川家康の生母である於大の方の号である“伝通院”から名付けられた寺社です。今日でも、牛天神~伝通院~蒟蒻閻魔ヘと散策すると、本作品中の情景の面影を垣間見れた気がしてきます。
小石川に住んでいるものですが、高層マンションが立ち、蒟蒻閻魔も影が薄くなったこの界隈。 往時を彷彿とさせる荷風の文章は、実に心に沁みます。