女性の裸を見せる踊りは大正10年頃からあったらしい。その洋風の踊りは戦後からということだ。勉強になった。
荷風の裸体という小説を読んだあと、青空文庫にも収録されているかと探したのだが、それはない代わりに、タイトルが似ているこの随筆があったので読んでみた。ここに書かれているのは、ショーとして裸体を見せる、おもに戦争直後の風俗史とでもいうべき随筆なのだが、こういう地道な取材が、ああした作品に結実したのかと思うと、たいへん興味深い。小説の方は、会計事務所の女性事務員が盗みを疑われたことが切っ掛けで、会計士の愛人になり、秘密パーティーのヌードダンサーから、やがて娼婦へと変転していく謂わば転落物語なのだが、当の作品-裸体からは、一見想定されるような悲惨さは聊かも感じとることはできない。この裸体という小説のラストは、場立ちの娼婦だとみなして近づいてきた男に、逆に金などいらないから抱いてくれ、体が疼いて仕方がないと男にしがみつくと、意表を衝かれた男がおもわず哄笑するという場面で終わっている。このときの男の笑いをどう読むかがこの小説を味わう勘所といえようか、それは嘲笑でもなく憐笑でもなく、もちろん冷笑なんかでもあり得ない。思うに荷風はきっと、因習や世間体から自らの性欲を解き放つことのできた女への感心の気持ちと、男と対当の性欲を目の前の女に見出だした快采とをあの哄笑に込めたのではないかと愚考した次第。
戦前と戦後、また日本と西洋との風俗の流行りの違いを興味深く 伝えてくれている。 淡々とした文章で 読みやすい。 混乱する下町文化の変遷を垣間見れて 面白かった。 永井荷風の作品は あまり読んでいなかったので もっと読んでみようと思いました。