「孔雀船」の感想
孔雀船
くじゃくぶね
初出:「孔雀船」左久良書房、1906(明治39)年5月

伊良子清白

分量:約52
書き出し:故郷の山に眠れる母の靈に岩波文庫本のはしに阿古屋の珠は年古りて其うるみいよいよ深くその色ますます美《うる》はしといへり。わがうた詞拙く節《ふし》おどろおどろしく、十年《とゝせ》經て光失せ、二十年《はたとせ》すぎて香《にほひ》去り、今はたその姿大方散りぼひたり。昔上田秋成は年頃いたづきける書《ふみ》深き井の底に沈めてかへり見ず、われはそれだに得せず。ことし六十《むそ》あまり二つの老を重ねて白髮《しら...