私は小心者で 注射針でさえも 怖くてたまらない。 まして『処刑器』なるものの 詳細な描写を 粘着質の将校が 延々と ときに嬉しそうに 説明するのには 辟易する。 暗喩と皮肉に富むこの作品は 残虐な独裁者にこそ読ませたい。 現代の 拷問の機械は はるかに 痛ましいものなのかもしれないと感じた。
とある流刑地にて稼働し続けた執行人と奇妙な拷問器具のお話。人を傷付ける生々しい描写と内向的な人間の仰々しい語り口を楽しむ小説だろうか。人間はどんな仕事にも使命感というモノを見出し、尊敬出来る人物に誇りある業務を指示されれば、それはやり甲斐を越えた狂信にも転じてしまうのだろうか?といった事を考えさせられた。 将校は前司令官による馬鍬<エッゲ>の公開拷問を執行していた時代に人から注目され、権威により承認され、罪人を罰するという正義感を満たす快楽を得ていた。 今や自分の仕事が他者にも社会にも認められていないと客観視出来ているにもかかわらず、執着するのは自分にとっての輝かしい時代を忘れられなかったからだろう。 こんな頭のおかしいいわく付きの流刑地に出向となった現司令官はどんな事をやらかしたのかも、少し気になった。 あと旅人がまともな感性の狂気に負けない常識人で非常に助かった。陰鬱な物語の中で最後まで自分のスタンスを崩さない人物だった。
背筋がゾクゾクする内容で、さすがカフカというところです。 生理的に怖気立つ展開です。 ネットで「カフカがこの作品を朗読したら退席者が続出した」という話を見たが、得心した。 それくらいえぐい内容(誉め言葉)でした。