学校は退学、親には勘当された作者がこの様な家族愛に満ちた作品を残すのだから人間は分からない。感動した。人間愛と言って良いかも知れない。
橘氏しか書けないタッチで進んでいくもの悲しい物語。橘外男の世界に引き込まれる。しかしながらこの時代の作家には久生十蘭はじめ凄い人がいたものだ。
冒頭の、黴菌、という表現で結末の予想がついてしまったので面白みは少なかった。 ハンセン病への偏見と差別が蔓延していた時代の作品である。当時の常識を知るという意味では貴重だと思う。 家族がある病気になったというだけで、一族ぐるみで社会的に抹殺される恐怖に取り憑かれ、追い詰められてしまうのは、今のコロナパニックに陥った日本社会と重なるように思う。
仁王門の楼上に 秘された 謎解き仕立てで 話は展開するけど 投げかけられる 問には 深いものが在ると 想った。