――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――
――キリシタンとらいぶんかぜんごにおけるにほんのしそうてきじょうきょう――初出:「中央公論」1951(昭和26)年3月号和辻哲郎
和辻哲郎の埋もれた日本キリシタン文化渡来前後における日本の思想的状況では室町時代中期応仁の乱までの応永、享永年間が、最も文化が華咲いた時代であると言う。世阿弥や雪舟など、多くの文人巨匠が輩出した時代である。応仁の乱以後は下剋上の時代と言われるが、これは旧体制の人間から見た、旧来の秩序の崩壊みに見えただけで、新しい社会変動にすぎない。和辻哲郎は歴史学者ではなく、民俗学者なので、歴史の扱いが違う。