芥川竜之介
甚内が弥三右衛門に返した恩が、巡り巡って伜弥三郎を失うことになったのは皮肉だが、よくよく考えてみると、弥三郎の親不孝と報恩にかこつけた身勝手な意地であることが分かる。甚内が弥三郎に親孝行しろと説教するところは、甚内がこれまでしてきた悪業を考えると矛盾しているようだが、弥三右衛門への恩義から発した言葉だろう。
甚内は 破産寸前の豪商の危機を 救う。 豪商の勘当された倅は 盗賊である甚内の 身代わりとなり 生首を晒される。 二重の 恩返しとなり 哀感が 漂うと感じた。