「夢」の感想
ゆめ
初出:「奇蹟」1912(大正元)年10月

相馬泰三

分量:約12
書き出し:一そとは嵐《あらし》である。高い梢《こずゑ》で枝と枝との騒がしくかち合ふ音が聞える。ばら/\と時折り窓をかすめて落葉が飛ぶ。だが、それ等は決して、老医師の静かな物思ひのさまたげにはならなかつた。天井の高い、ガランとした広い部屋の中の空気はヒヤ/\と可成《かなり》冷たかつたが、彼は大きな安楽椅子《あんらくいす》に身を深く埋めてゐたから、それも平気であつた。それに物思ひと云つても、それは彼のこれまでの...
更新日: 2018/05/13
cc7a23b4b40dさんの感想

八人の子供がいる老医師が自分の庭に松を植え始める。それを大事に育て毎年更に土地を広げて植え、冬には霜が降りて春には黄色の花粉が石に付いている風景を老医師は楽しんでいた。 いつしか老医師は松林の中の一番お気に入りの場所に自分の墓を造りたいと思うようになり、その場所を見つけた。そこに自分の家族全員の墓ができることなど想像していた。 或る時松林の下に自分がいていることに気付いた。つまり墓に居る。見上げると松林が見える。しかし周囲の松林は赤く枯れており、遠くを見ると更に広がる松林であったが、赤く枯れた松林が広がっていた。それは夢であったが、その夢はそれ以後何度も見るようになった