本作品のタイトルを見たとき、鋳物工場が舞台となった職工さんやその方々を取り巻く人々の日常生活を著された作品だと思いました。日活映画『キューポラのある町』みたいな情景を想像した訳です。ところが、二三ページ読むと、鋳物工場における労働争議が題材であることが分かりました。本作品を掲載していた「女性芸術」は、女性の労働運動を題材にした作品を掲載した雑誌であることを、やっと思い出した次第です。本作品の掲載時期は、世界恐慌の頃で、日本では昭和恐慌の時代ですから、女流作家のプロレタリア文学の最盛期だったのでしょう。作品の展開が、ある場面から次の場面へ移る過程の繋がりが、突然変わる感じがして、読み進め辛いのですが、当時の労働者の生活が分かる作品なので、プロレタリア文学に興味のある方は、ご一読下さい。