永井荷風
女に物足りない男と男に袖にされた女、一緒になってもうまくいかないわな。
競馬場の喧騒とその猥雑さを好む妻を嫌悪し、逃れ出た場外で出会った女に惹かれ、思わず手を握ってしまおうという衝動に駆られる欲情の描写が見事。その二度目の妻ともうまくいかなかったらしく仄めかされるラストには、荷風の人間に対する無常感がただよう。
なんてことの無いストーリーなのに風景の描写が美しく、引き込まれてしまった。