すみだ川
すみだがわ
初出:「新小説 第14年第12巻」1909(明治42)年12月分量:約135分
書き出し:一俳諧師《はいかいし》松風庵蘿月《しようふうあんらげつ》は今戸《いまど》で常磐津《ときはづ》の師匠《しゝやう》をしてゐる実《じつ》の妹《いもうと》をば今年は盂蘭盆《うらぼん》にもたづねずにしまつたので毎日その事のみ気にしてゐる。然《しか》し日盛《ひざか》りの暑さにはさすがに家《うち》を出かねて夕方《ゆふかた》になるのを待つ。夕方《ゆふかた》になると竹垣《たけがき》に朝顔のからんだ勝手口で行水《ぎや...