武士道の山
ぶしどうのやま
初出:「英文新誌 三巻一七号」1906(明治39)年3月15日分量:約4分
書き出し:武士道は斜面緩かなる山なり。されど、此処彼処《ここかしこ》に往々急峻なる地隙、または峻坂なきにしも非《あ》らず。この山は、これに住む人の種類に従って、ほぼ五帯に区分するを得べし。その麓に蝟族する輩は、慄悍なる精神と、不紀律なる体力とを有して、獣力に誇り、軽微なる憤怒にもこれを試みんと欲する粗野漢、匹夫の徒なり。彼らはいわゆる「野猪武者」にして、戦時には軍隊の卒伍を成し、平時には社会の乱子たり。更に...