「快走」の感想
快走
かいそう
初出:「令女界」1938(昭和13)年12月号

岡本かの子

分量:約14
書き出し:中の間で道子は弟の準二の正月着物を縫《ぬ》い終って、今度は兄の陸郎の分を縫いかけていた。「それおやじのかい」離れから廊下を歩いて来た陸郎は、通りすがりにちらと横目に見て訊《き》いた。「兄さんのよ。これから兄さんも会社以外はなるべく和服で済ますのよ」道子は顔も上げないで、忙がしそうに縫い進みながら言った。「国策の線に添ってというのだね」「だから、着物の縫い直しや新調にこの頃は一日中大変よ」「はははは...
更新日: 2021/02/06
19双之川喜41さんの感想

 昭和初期の事なので 若い道子は 国策にそって 縫い物をする。 屈託するので シャツにパンツを 着物で隠し 足袋を持ち 銭湯を口実に 毎夜 土手を走る。 不審に思って  後を追った両親は 何やら爽快な気分になる。 ランニングに込めた 静かな反戦が 巧みであると感じた。