「源氏物語」の感想
源氏物語
げんじものがたり

54 蜻蛉

54 かげろう

紫式部

分量:約96
書き出し:ひと時は目に見しものをかげろふのあるかなきかを知らぬはかなき(晶子)宇治の山荘では浮舟《うきふね》の姫君の姿のなくなったことに驚き、いろいろと捜し求めるのに努めたが、何のかいもなかった。小説の中の姫君が人に盗まれた翌朝のようであって、このいたましい騒ぎはくわしく書くことができない。京からの前日の使いが泊まって帰らなかったため、母夫人は不安がってまた次の使いをよこした。まだ鶏の鳴いているころに出立た...
更新日: 2024/04/09
19双之川喜41さんの感想

 当時は 広く 姫の失踪という 出来事は さほど 珍しくは なかった らしい。御遺体の ないままに 夜着などを 取り纏めて 火葬に ふして しまったようにも 見受けられる。とはいえ  何と言っても 遺体無しで 着衣を 荼毘に 取り急ぎ ふすなどは 大方の 疑心暗鬼を まねくので 厳重な 箝口令を しいた。ホトトギスが なきわたりつつ 飛び去る 夏の夕暮れに 世の中の 無情を ひとり つぶやくは さもありなんと 想った。