民族優勢説の危険
みんぞくゆうせいせつのきけん
初出:「東西相触れて」1928(昭和3)年10月29日分量:約5分
書き出し:右に述べた歴史の長短と聯想されて起る問題は大和《やまと》民族の立場である。我々が新聞や演説に常に天孫民族ということを聞くは、あたかも排外的米人がアングロ・サクソン民族とかノールディックとかを振りまわすように、耳ざわりとなるほど多いのである。果して大和民族という純粋な民族があったかすら未だ判然せぬ。かく呼《よ》び做《な》す如き民族は政治上の目的のために作った一種の仮装談《かそうだん》であるならば、そ...